提灯に描かれている文字(書体)と家紋について、ご説明いたします。
提灯に描かれる文字の多くは、「江戸文字」
提灯の文字は楷書・行書・隷書・篆書・登録商標・ロゴマークなど、指定文字や見本があればその様に描きます。指定がない場合は、楷書の筆文字を太くした文字(江戸文字)を描きます。
「江戸文字」は楷書を基本としているので読みやすく、太く描くので遠くからも良く解ります。はねやはらい等にメリハリを利かせ力強く見える工夫もなされています。
同じ文字でも、書体で雰囲気が変わります

「籠文字」 まずは鉛筆・木炭で下描きを

「籠文字」 次に面相筆で素描きします
江戸時代の大型提灯に文字を描き入れる様子
提灯に家紋をどう描くか?
■下描きは“手作りのコンパス”で
提灯に描く家紋は、最初に家紋の大きさを決める外丸を回し、中心にある丸(辻の丸)を描きます。
次に面相筆や分廻し(手作りのコンパス)を使ってこの丸を基準にして線を描きます。
外丸の円周を等分に割ったり、左右対称に分割し、面相筆を使いフリーハンドで素描をし、
塗り筆で中を塗りこみ完成させます。
家紋や素描文字を塗る方法は、
端から順番に塗り込んで仕上げる方法と、
塗り勝手の良い所から塗り、
提灯を逆さにして残りの部分を仕上げる方法
があります。
また提灯は、竹骨の所に墨などが溜まりやすいので、流れない様に注意しながら
仕上げることが必要です。
■塗りの作業は書道に反する!?
「ちょうちん屋をするな!」
これは書道の先生の言葉です。書道の時間に
「あー、ここの止めがもう少し太ければなぁ。」
「ここのハネが足りなかった。」
と言って字を太くしてみたり、ハネを付けてみたりした経験はありませんか?
書道は一度文字を書いたら、上からもう一度字をなぞることはできません。
それとは反対に提灯屋は、面相筆で文字の輪郭を取り、塗り筆で中を塗りこんでいきます。
一つの文字を描くのに、何度も何度も筆を往復させていくのです。
そこでこの言葉、『ちょうちん屋をするな』とは、書道の時間に、
「ちょうちん屋のように、一つの文字に何度も筆を走らせるな」という意味で使われているのです。
■すり鉢でゆっくりすって作る「墨汁」
黒の塗料は墨を擦って作ります。 折れ墨(製造工程で傷が付いたくず墨)を当たり鉢(すり鉢)に入れ、大きなしゃもじでかき回しながら、 水を少しずつ入れゆっくり時間を掛けて、その日一日に使用する墨汁を作ります。

家紋の一例
『家紋見本集』に載っている家紋

⇒
実際に提灯に描く家紋

丸に五三桐

⇒

丸に三柏

⇒

丸に違鷹羽
※ 『伝統的家紋見本集』より抜粋。ぜひご一読下さい。
お電話でのご注文は、承っておりません。
ご注文の際は、ご来店・FAX・インターネットまたは封書にて御願い致します。
(文字などの描き違いを防ぐため、ご協力をお願いします。)